自殺の現状(自殺対策白書 平成27年度版より)

 

我が国の自殺者数は、平成10年以降、14年連続で3万人を超える状態が続いていたが、24年に15年ぶりに3万人を下回り、26年は2万5,427人となりました。

 

内閣府発行の「平成27年度 自殺対策白書」から、特徴的な数字を拾ってみました。

自殺死亡率の長期的推移(人口動態統計)



自殺が増加している3つの山について
時代背景が自殺にどう影響をあたえているのかを一緒に考えてみましょう。

 

 ●1つめの山(昭和30年前後)

 

昭和30年前後は男女とも15〜24歳及び25〜34歳の階級で自殺者数が増加している。
(時代の背景)
太平洋戦争の終戦の日を境に、社会の価値観が大きく変わってしまった。
戦時体験のトラウマを抱えている方も多かったのではないかと言われている。

 

 ●昭和60年前後のM字型の山

 

男性のみが増加しており、中でも35歳〜64歳の働き盛りの中高年世代の自殺者が多い。
(時代の背景)
1985年のプラザ合意の影響でドルに対して急激な円高となり、輸出企業に大きな打撃を与えた。東京や大阪の町工場では倒産が続出した。(円高不況)

プラザ合意について

 

1985年(昭和60年)プラザ合意はその頃頃貿易赤字に苦しんでいたアメリカに対して、G5(先進5カ国蔵相・中央銀行総裁会議、日本・アメリカ・ドイツ・フランス)がドルに対して参加各国の通貨を切り上げるという協調介入を行うことを合意した。これがニューヨークのプラザホテルで行われた為、プラザ合意と言われている。

 

 ●1998年(平成10年)から14年連続自殺者は3万人を超えている。

 

平成10年の急増では、特に男性の25歳〜74歳の各階級で大きく自殺者が増加している。
その後の14年間の推移をみると、中高年男性の自殺は依然として多いものの、傾向としては減少傾向にあり、男性・女性とも若い世代の自殺が増加傾向にある
(時代の背景)
日本は公定歩合を下げて円安誘導することで輸出産業を守る政策をとるが、市場にお金があふれバブル経済へとつながっていく。
1989年に日経平均株価が38、915円をつけたあと、湾岸戦争・原油高・公定歩合の急激な引き上げにより、わずか半年で株価は半値の20,000円となりバブルの崩壊が始まった。
1997年〜1998年には、拓銀・長銀・日債銀や山一証券など、大手の金融機関が相次いで破たん。メインバンクを失った企業も倒産が相次いだ。

変額保険について

 

保険を投資信託に似た投資勘定で運用することから、株価が上がる状況下では運用益を借入金返済の一助とできるし、保険金額(即ち資産)が増やせ、また、借金と相続資産を相殺して相続税額が抑えられ、さらに払い渡される保険金には別個の控除枠があり相続税の節税にもなるなど、良いことだらけの方法として、銀行から多額の借金をしてでも加入することが勧められた。最盛期には、払い込む保険掛け金を融資する銀行の担当者と、保険契約を結ぶ保険会社の担当者が、連れだって販売に回ることさえあった。

 

バブル崩壊後は不動産の価格が大きく下落すると同時に投資信託が大きな損失を出して受け取れる保険金額が目減りし続ける一方、借金はそっくり残り、場合によっては保険金を含めた全資産がマイナスに転じるなど、契約者を苦況に陥れた。満期時の返戻金額が元本を大きく下回り、手数料も掛かることから解約にも踏み切れず、株価が下がるにつれて見る見る保険金額が減っていくのを目の当たりにして「私が早く死んだ方が良いということか」と問う被保険者に、担当者が「その通りです」と答えた事例も伝えられる。満期時の保険返戻金が、最低額が保証されている死亡保険金を大きく下回った場合には、死亡保険金を獲得するために被保険者が自殺を選択した例もあった。

 

後に、顧客側からリスクの説明を怠ったとして多くの訴訟が起され、だいたいのケースでは顧客と販売者双方の過失を認めるとともに、販売者側に損害賠償を命じている。

(Wikipediaバブルの崩壊より)

企業は雇用の抑制を行い、就職できなかった多くの若者はフリーターやニートとなり、彼らの生活・雇用の不安定さ、社会保障の負担が充分できずにセーフティーネットから外れ困窮する状態に陥る。企業は、新規採用を控えるばかりかリストラを行うようになり、終身雇用制が当たり前ではなくなった。

 

1990年デフレ経済へとと陥って以降、そこから回復できていない。

 

2008年には、サブプライムローン問題をきっかけとする世界同時不況により、景気が急激に悪化。GDPがマイナス成長となった。また、リーマン・ショックやギリシャ危機により、ドルやユーロの価値が急落したため、円の価値が相対的に上がった。しかし、政府や日銀の対応の遅れから円高傾向を食い止めることができずに80円台半ばにまで上昇し、加えて原油の高騰などによって輸出の減少や企業の海外流出が進んだ。日本やアメリカ合衆国の経済はマイナス成長に陥り、中間層の没落(貧困層への転落)が急速に進んだ。日本ではバブル崩壊後、失われた20年と言われている。ハローワークは失業者で溢れた。

 

2010年には世帯所得が昭和62年並に低下した。
2011年には、東日本大震災、福島第一原子力発電所事故が起こった。

 

 ●2012年の自殺者数が15年ぶりに3万人を切る

 

(時代の背景)

 

2013年、安倍政権が発足し、経済再生を掲げ大型の補正予算を組む。

平成18年までの原因・動機別の自殺者数の推移


平成19年以降の原因・動機別の自殺の状況をみると、「健康問題」が最も多く、次に「経済・生活問題」が多い。
推移としては、「健康問題」、「経済・生活問題」共に減少している。

平成19年以降の原因・動機別の自殺者数の推移


 ●健康問題について

 

健康問題の内訳をみると、「病気の悩み・影響(うつ病)」、「病気の悩み・影響(身体の病気)」による自殺者数が非常に多く、その傾向はほぼ変わっていない。

 

健康問題については、自治体の熱心な取り組みにより、多くの地域において既に成果がみられるようになってきているといえる。

 

 ●経済・生活問題について

 

経済・生活問題の内訳をみると、「生活苦」が21年以降最も多くなっているが、その後は減少に転じている。
また、「事業不振」、「失業」も21年をピークに減少している。
 完全失業率は、平成9年以前から「経済・生活問題」を原因・動機とする自殺死亡率と強い相関関係が認められており、近年においても「失業」による自殺死亡率とも強い相関関係がみられている。

 

主要国の自殺死亡率


ほとんどの国で男性の自殺死亡率が女性を上回っている。
2000年以降のデータがある国では、
1位・・リトアニア 2位・・韓国 3位・・ロシアとなっており日本は8位
女性について  1位・・ガイアナ 2位・・韓国 3位・・日本


 
ホーム 各種講座 ご依頼 ゲートキーパーの役割 予防カウンセリング 活動